【私の人生に影響を与えた○○】伝統工芸から学んだ基礎。ひたすら糸鋸を引く毎日がくれたもの


子供と彫金とガーデニングと。
日々の暮らしを
大切に楽しんでいきたい。
彫金によるオリジナルジュエリーの制作をしています。

 

atelier fine代表 オリジナルジュエリー作家  深田 可都美

繊細で、自然をモチーフにしたような柔らかな曲線美が美しい
そんな1点もののジュエリーを制作販売しているジュエリー作家の深田可都美さん
深田さんの手から生まれるジュエリーの製作過程と
その技術を習得するに至った半生についてお話を伺いました。


手に職をつけたい


──彫金を始めたきっかけと今に至った経緯はどういったものだったのでしょうか

私の実家は家で商売をしており、子どもの頃から、
「もし自分にも子どもができたら、家で仕事がしたい。」
と考えていました。

また、もし結婚したとしても自分の足で立てるようになりたいと考えていて、独身の頃から”手に職を付ける”ことを目標にしていました。

自分の好きな事で、得意分野の「手を使ったものづくり」をしたかったのですが、具体的に何がしたいのかがはっきりしないまま、昼間は働きながら様々な教室に通う試行錯誤の日々が続きました。

ガラス、陶芸、革細工・・・色々なことを試しましたが、教室でさせてもらえることといえば、お膳立てされた範囲での表面的なことばかり。
カルチャースクールの範囲を超えることはなかなか叶いませんでした。

そんな中で彫金の
「何もないところから、作品を新しく作り出す事」
「技術さえあれば、自分の目指したものが出来上がる」
というところに惹かれ、私はコレで行くと決め二十代の頃から続けてきました。

──彫金の先生との出会いは?

電話帳です。笑

当時は今のようにネットで情報が探せる時代ではなかったですから、分厚い電話帳を拡げ、彫金教室というキーワードを頼りに探しました。

そこで最初に出会ったのが京都の「わしお彫金教室」です。
わしお先生のもとで彫金の技術の基礎を学びました。

しかし、週に1度の習い事ではそれを仕事にするというレベルまでにはなかなか上達出来ず、また近頃のようにネット上で手作りの作品を売るというサイトもなく趣味の範囲から抜け出すのは難しかったです。

それでも彫金をしている時間が楽しく、引越しで京都から離れても、職場が変わっても、細々と続けてきました。

二十代後半からは、新たに”鎚舞”という教室の中村先生に師事しました。
実はこの中村先生との出会いこそが、その後の私の彫金人生を大きく変えるきっかけとなる出来事の始まりでした。


▲彫金に使う道具の数々 中には道具から手作りされるものもあるそう!

 

──大きな転機となった出来事、気になります。いったいどんなことがあったのでしょうか?

中村先生は京都の伝統工芸をされている先生だったのですが、その先生に依頼された大きな仕事のお手伝いをさせていただけることになったんです。

それは東京国立博物館に展示される 法隆寺宝物館 灌頂幡のレプリカを作るというお仕事でした。

▼灌頂幡とは本来大仏の後ろに飾られるものですが、このレプリカは現在も東京国立博物館の階段吹き抜け部に飾られています。

”幡(ばん)は寺院の堂の内外を飾る荘厳具(しょうごんぐ)の一つで、古代の幡の多くは染織品であった。
この灌頂幡は「法隆寺献納宝物」を代表する名品で、透彫で如来や天人、雲、唐草文などを表した金銅板(銅板に金メッキ)を組み合わせて構成されている。”

(東京国立博物館の案内から引用)

この灌頂幡は多くのパーツが組み合わさって出来ており、それぞれ専門の職人さんが形を作ったり削ったり、磨いたりして出来上がるのだそうですが、なんと深田さんはこの繊細な透かし模様の「糸鋸」担当に大抜擢されたのです。


▲近くで見ると、こんなにも繊細で美しい

板状の金属にまず小さな穴をあけて、そこに糸鋸の歯を通し、下絵に沿って切り抜いていきます。
ひとつのパーツを作るだけでも何度もその作業を繰り返します。
考えるだけで気の遠くなるような作業!

それを毎日毎日、3年間やり続けたそうです。
ご結婚されていましたが、まるで修行僧のような毎日だったそう。
ご主人の理解とご協力があってこそですね。

完成したときの喜びは私たちの想像をはるかに越えるものだったことと思います。


▲写真は現在の深田さんの工房での様子。3年間の修行のおかげでこんなに細かいものもすいすい。

レプリカとはいえ、ご自分が作ったものが東京国立博物館に展示されているなんてすごいですね


人生に影響を与えたもの


──そんな深田さんの人生に影響を与えたものとは何ですか?

現在私は、彫金という技法を使ってジュエリーの制作販売、及び彫金教室を仕事としていますが、人生において影響を与えたもののひとつは、やはり「彫金」そのものになるかと思います。

先生方の下で色々な”技術”とともに作品に対する”意識”を学ばせていただいたこと、それから教室の講師としての”教える”経験を積ませていただけたこと、いつでも先生に教えていただけるという安心が今の仕事で私が続けていける支えになっています。

出産して子どもが小さい頃は彫金から離れてしまった時期もありましたが、やはり自分の人生に「彫金」は無くてはならないもの。

念願のマイホームを建てるときには彫金をするための部屋を作り、
工房兼教室となっています。
小さなスペースながらも、今ではそこが私のお城です。



▲深田さんの胸元に光るジュエリーも深田さんの代表作のひとつ。いつもご自分で作られたジュエリーを身に付けていられるなんて、憧れます。

──とても興味深いお話をありがとうございました。では最後に今後に向けてのビジョンを教えていただけますか?

今、私の教室に通ってくださる生徒さんの多くは、ゆくゆくはご自分の仕事としたいと考えておられる方が多いので、そのお手伝いと、長年肌身離さず使っていただける「マリッジリング」をお二人で作っていただける教室に力を入れたいと思っています。

また、手にとっていただけた方の「お守り」となるようなジュエリーを目指し、精進したいと思っています。


深田さんの糸鋸の技術を生かしたアルファベットのジュエリーを見せていただきました。
自分のイニシャルがこんなに素敵なジュエリーとして身に付けられたら本当に素敵。
お守りとしてそっと身に付けたくなる・・・そんな佇まいです。

1点もののオリジナルジュエリー、私も欲しくなりました。

▲重ね付けが楽しめる、石のついたリング、大小好きな組み合わせでつけるのが楽しそうです。

 

深田可都美さんのジュエリー、気になった方はHPからご購入できるそうです。
また、滋賀県南草津にある工房では彫金教室の生徒さんの枠に今なら空きがあるようですよ。

atelier fine代表 深田 可都美
JJCA日本ジュエリークリエイターズ協会公認
オリジナルジュエリー作家 講師
Original jewelry creator
http://www.atelierfine.com/
作品はインスタグラムでもご覧になれます。