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NHKの朝ドラ「スカーレット」の放送が終了した今もロケ地巡りの観光客が絶えない滋賀県・信楽。
信楽では今、世界中の女性を魅了するスウェーデンの女性陶芸家リサ・ラーソン展を開催中です。
(展覧会の会期が6月28日まで延長となりました)
今日はそんなリサ・ラーソンさんにも縁があり、信楽で夫婦で作陶をする人気女性陶芸家
青木寿美子さんにお話を伺いました。
青木寿美子さんの経歴
<経歴>
愛知県 名古屋市出身
名古屋芸術大学美術工芸科デザイン学部卒業
愛知県立芸術大学美術研究科大学院 陶磁科専攻卒業
信楽にて独立
工房sunny craft創設
愛知、関西等で個展多数
2013 長三賞陶業展 長三金賞受賞(グランプリ)
2014 秀明文化基金賞受賞
2015 リサ・ラーソンとのコラボレーション 「生命の樹」発表
▲屋外に設置されたモニュメントはいつでも見ることが出来ます。
陶芸を始めたきっかけ
--まず始めに青木さんが陶芸を始めたきっかけをお話いただけますか?
名古屋芸術大学の美術学部デザイン科でデザインの基礎を学んだあと、専攻が分かれる3回生で陶磁器を専攻しました。
他にも色々興味はありましたが、陶芸に他にはない自由さを感じ、選びました。
それが陶芸を始めた始めたきっかけです。
その後さらにもっと深く学びたいと愛知県立芸術大学の大学院に進み、大学院を出た後、大学の先輩の紹介で信楽の陶器会社に就職しました。
当時、会社勤めをしながら自分の制作が出来るというのは最高の環境だったのだと思います。
それがなければ、今こんな風に陶芸を続けて来れなかったかもしれません。
けれど、次第に自分の作品だけにかける時間をもっと確保したいと思うようになり、30歳で会社を辞めて陶芸家として独立を決意。
▲庭のちょっとした草木も景色に変わる青木さんの一輪挿し
作家としての独り立ちと工房「sunny craft」設立
--独立すると、今まで使えていた会社の作業場や設備は使えないんですよね?苦労はなかったですか?
そうなんです。
独立するからには、自分で作業場も住むところも探さなくてはなりません。
もちろん陶芸窯もそうです。
けれど私なんかは割とまだ恵まれてる方で、何年間か働いている間に横のつながりだったり縦のつながりを作れたことがラッキーでした。
その数年間があったから、独立する時も
「ここに窯付きの作業場があるよ」
とか、
「土はあそこで買うといいよ」
といった情報も、周りの皆さんが教えてくださいました。
信楽の人たちの暖かさをしみじみと感じた時でした。
会社を辞めてからも、今でも私の作る食器を店の1番良いところに置いてくださったり、色々と良くして頂いています。
▲ご主人と協力して立ち上げたブランドsunny craftの食器が所狭しと並びます。
▲カフェ「かまーとの森」で買う事が出来ます
ランチプレートのドットのお皿も、こちらのカフェでずっと使っていただいています。
これらはsunny craftという、普段使い出来るお求めやすい価格帯の食器のラインナップとしてブランディングさせていただいているもので、一点一点手作りであることには変わりないのですが、展覧会に出品する「青木寿美子」としての一点ものの作品とは違うコンセプトのもと作っています。
手作りの良さを残しつつ、シンプルな柄と重ねられる統一した形状で、「使いやすさ」を重視しています。
▲料理が映えるsunny craftのプレート
日常を楽しく彩る器
--sunny craftの食器はどこで買えるんですか?
今、様々な取り扱い店も増えてきたんですが、1番種類が多いのは信楽の「かまーとの森」です。
あとはロハスフェスタやセラミックアートマーケットといったイベントに出店したり、ネット販売もしています。
ネット販売は一時期在庫が追いつかなくてカートを閉めていたんですが、今、新型コロナの影響で出店出来るイベントが次々に中止になり、イベントで買うのを楽しみにしていたお客様からネットでも買えるようにして欲しいという熱い要望を受けて、また最近カートを開けるようにしました。
--どうしてsunny craftというブランドを立ち上げたのですか?
最初はもちろん自分の作品だけでずっと信楽でやってたんですけど、どうしてもと手間がかかってこだわりすぎちゃうからお値段も高くなるし、それはそれで楽しいし、やめる気もないのですが、もうちょっとなんていうのかな日常使い出来て、主婦…私たちくらいの….30代、40代、50代の人が、朝お洋服を選ぶような感覚で食器を選んでもらえたらなと思って…。
あと、食事作りって毎日の事だけど、いつもSNS映えするような料理を作ってるわけではなくても、例えば今日はスーパーのお惣菜って日でも、食器を変えるだけで、美味しそうに見えたり、テンションも上がったりすると思うんです。
それってお洋服にも言えますよね。
可愛い服や好きな服を着ると、それだけで気分が上がるし、幸せな1日が過ごせる。
▲何気ないおにぎりやドーナツでさえも器が変わるだけで、お洒落に
私は料理も好きなので主婦目線で例えば使い勝手だったり、家族分揃えられるような価格帯だったり、そういうのを重視した食器を提案できるかなぁと思ってそれであえてそっちの方を主人と2人で立ち上げました。
最初は陶芸の森で年に1回あるクラフトマーケットだけに出していたんですが、人気が出て、思ってた以上にこういう食器を、お母さん世代の人は求めてるんだなぁっていうのがあって、それに共感できる部分がすごくあったんです。
クラフトマーケットをきっかけにオファーの話も沢山いただいたので本格的にやり出そうかなってなったんです。
アイデアの源
--青木さんの一点ものの作品には、何とも不思議な柄が描かれていますが、これは何からインスピレーションを受けるのですか?
私の絵付けは、全て即興で抽象なんですけど、インスピレーション受けているとしたら…日々の景色とか、心動いたもので印象に残ったものなんだけど。
わたしの「抽象」は、いつも「具象」との間に揺れ動いていて。
〇〇にみえますね、って言うその、使い手、買い手の反応を見たい為にやってるところも実はあるんです。
見知らぬ誰かと意識を共有したい、ってどこかで思って作ってるんです…
▲青木さんの作品は柄だけでなく形もひとつとして同じものはない
自然モチーフのカラフルイラスト刺繍の七分袖ブラウス mode-5958
影響を受けた○○
--一点ものの作品の柄を考えるのって大変そう…アイデアは次々と湧くものなんですか?
確かに自分の中からアイデアを絞り出すのは容易ではありません。
けれど、5年前のある経験から意識が変わった気がします。
▲大きな作品の絵付けにも挑戦しています
2015年に日本でも人気のスウェーデンの陶芸作家リサ・ラーソンさんが信楽の陶芸の森で展覧会をされました。
その時に陶芸の森とリサ・ラーソンさんとのコラボ作品を作るというお話があったんです。
リサさんのデザインをもとに信楽で形を作り、絵付けをするというもの。
なんと、その絵付けの依頼のオファーが私のもとに!
もちろんリサ・ラーソンさんの作品は存じ上げてましたし、非常に人気の高いビッグネームとのコラボにプレッシャーで押し潰されそうでした。
考えても考えてもいいアイデアが浮かばない…
けれど期日も迫る中、とにかくやってみようと、ひとつのパーツを手に描き始めたんです。
すると、描くうちにどんどんインスピレーションが湧いてきて、描きながら次はこうしよう、ああしようと、気が付いたらあっという間に全ての絵付けが終わっていました。
その時の経験があってから、自分の作品作りにおいても、とにかく手を動かし始める事で次のアイデアが浮かぶというスタイルが確立されたように思います。
ファッションへのこだわり
--青木さんの作品はとてもお洒落ですが、ファッションにもこだわりがあるのでしょうか?
若い頃からお洒落をするのは大好きで、年齢と共に好きなテイストは変わりますし、流行の服も好きです。
20代の頃は古着が好きで、友達と大阪のアメリカ村に行って古着屋巡りをした事もありました。
流行りの服はその時しか着れないので、思い切り楽しみたいと思っています。
そして、クラフトマーケットなどの販売イベントの前には必ず夫婦揃ってイベントに着る服を新調します。売り手がお洒落なほうが、お客さんも嬉しくなるし、作品も一段と良く見えるでしょ?笑
▲作品の並べ方や什器にもこだわりの世界観が
作品と同じで、いつもお洒落でいたいと願っています。作家である以前に、今の自分を楽しみたいと思っているので。
--確かに。自分を演出するにはお洒落はとっても大事ですね
今日着ているサワアラモードのお洋服もさり気ないのに変わっていて、他にはないデザインで気に入っています。着心地も良くて、何よりスタイルが良く見えるのも大きなプラスポイントですね 笑
--ナチュラルで気取っていないのに、ちょっときれいめなチェックのブラウスがとてもよく似合っています。
青木さんの作るお洒落な作品の世界観ともどこか通じている気がします。
前後2wayのチェック柄ドルマンスリーブトップス mode-5087
--青木さん、お忙しい中ありがとうございました。一日も早く新型コロナが収束して、またイベントで青木さんと青木さんの作品に出会える日を楽しみにしています。
青木さんの展覧会情報・イベント出店情報はインスタグラムでチェックしてみてくださいね。
青木寿美子
陶芸家